EUの2020年ブロックチェーン支出は一時減少、パンデミック後の回復を指摘=IDC予測

https://jp.cointelegraph.com/news/idc-eu-blockchain-spending-will-see-temporary-drop-due-to-covid-19 より引用

米市場調査会社IDCは5月5日、EU圏における、今後数年間のブロックチェーン関連支出予測を下方修正すると発表した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響によるものだが、この減速は一時的と説明。新型コロナとの戦い、回復プロセス支援の面でブロックチェーン採用例が見られ、その利点を示せる可能性を指摘した。

2019年8月、「世界ブロックチェーン関連市場支出ガイド(2H18)」において、ブロックチェーンソリューションに対する支出額(世界)は、2023年に約160億ドル(約1兆6908億円)に達すること、また2018年~23年までの5年間にわたる年間平均成長率(CAGR)は60.2%で、堅調に成長すると予測していた。

またEUにおけるブロックチェーン関連支出は、2020年に14億ドル(約1493億5000万円)、2023年までのCAGRは58%と健全に成長すると予測していたという。IDCは、ブロックチェーン関連支出は若干減速し、EU市場の2020年支出は前回予測より約8%減少すると予測しているそうだ。

IDCヨーロッパのブロックチェーン・プラクティス責任者のカーラ・ラ・クローチェ(Carla La Croce)氏は、次のように説明した。

「顧客需要の低迷、サプライチェーンの混乱、リモートワーク(テレワーク)の広範な普及が重なっており、ブロックチェーンを含む革新的なプロジェクトについては、将来が明確になるまで多くの企業が保留にしている」

一方IDCは、IDC公式ブログにおいて、新型コロナとの戦い、また回復プロセス支援の面でブロックチェーン採用例が見られ、複数ユースケースでその利点を示せる可能性を指摘した。

サプライチェーン・マネジメント

パンデミックにより、安全性への懸念から多くの工場が操業停止する中、特に医薬品に関し極端に高い需要が発生した。この影響により、多くのユーザーや医療関係者・患者が、出所や品質が不明な医療品の供給を受けざるを得ない状況となっているそうだ。

IDCは、従来のサプライチェーンが不透明性を払拭しきれず、供給予測・計画変更が困難となっていることが原因だと指摘。ブロックチェーンを利用することで、透明性を備えた単一の情報源、さらにセキュリティが提供可能となると説明した。パンデミックをきっかけに展開を始めたブロックチェーンの多くが、サプライチェーン・マネジメント関連となっているという。

プレスリリースにおいてクローチェ氏は、「サプライチェーンの信頼性・透明性・経路追跡においてブロックチェーンがもたらすメリットを考えると、2020年のブロックチェーン関連支出は一時的に減速するだけで、パンデミック緩和後はすぐに回復すると予想している」と述べた。

濃厚接触検出・追跡(コンタクト・トレーシング)

ブロックチェーンは、患者データの収集と照合をより効率的に行うとともに、患者の動向監視およびソーシャル・ディスタンスを保証し、さらに患者のアイデンティティを保護するために使用できるという。ブロックチェーンの場合、中央システムの権限が及ばず、ユーザーが個人的なデータを管理できると指摘した。

IDCによると、EUのプライバシー専門家チームが、Bluetoothを利用した、ブロックチェーン基盤の分散型濃厚接触検出・追跡(コンタクト・トレーシング)システムを提案しているという。EUの法律家・疫学関係者・エンジニア・研究機関らが協力し設計したオープンソースのプロトコル「分散型プライバシー保護近接追跡(DP3TまたはDP-PPT。Decentralized Privacy-Preserving Proximity Tracing)」を採用しているそうだ。

災害救援・金融ライフライン

IDCによると、世界中の政府が実施した強制的なロックダウン(都市封鎖)は、ほとんどの企業に大きな打撃を与え、実店舗の閉店や必要不可欠な商品以外の需要の急落に追い込んだという。多くの政府が、急激な景気後退の防止策として、融資・金融面におけるライフラインを提供しているそうだ。

ブロックチェーンは、保険業界などですでに利用されており、仲介者や処理遅延を排除し、複雑な申請・承認プロセスの簡素化・短縮に貢献している点を指摘した。処理時間の短縮、コスト削減、運用リスク低減、迅速な決済などのメリットが得られるという。